先週のムツをいろんな料理で楽しんだ。この魚の味を一言で表すなら、典雅ということばが思い浮かぶ。不細工な魚ほどおいしい、とは釣り人の間でよく言われることで、この魚もおよそ外形からは想像ができない典雅で繊細な味の持ち主だった。
今回のメニューは刺身、煮付け、唐揚げ、味噌漬けそして干物だ。初めて釣りそして食べる魚なので、どんな料理が合うのかわからなかった。そこでいろいろ試してみることで、魚の特徴に合った料理法を探すことにした。
<刺身>
薄くそぎ切りにしてポン酢で食べた。醤油だと醤油の味と香りが勝ってしまうので、ポン酢の方がよかった。紅葉おろしをちょっぴり加えると、味に締まりがでた。ムツの身はとても柔らかく歯ごたえはほとんどない。その代わり、とろけるような舌触りでかまなくても味わうことができる。けっこう脂がのっていたのにさらりとしていて、しつこさは全くなかった。柔らかく脂ののりが上品で味に奥行きがある刺身だ。
<煮付け>
刺身にできるほどのムツなので煮付けても身に弾力があり、煮汁をはじくぐらいのつやがあった。思ったより脂が多く、それが旨みになった。肉厚の魚なので、ほっこりした身をほおばるように食べることができる幸せを味わえた。魚を鍋から出して、煮汁を煮詰めるととろみが出てくる。それをソースのように魚に垂らす。身を食べるときにソースに絡ませるとムツの淡泊さをソースが補ってくれる。ムツ自身から出ただしで作ったソースなので、合わないわけがない。
<唐揚げ>
皮を引かず一口サイズに切って揚げた。衣は片栗粉をうっすらとまぶすだけ。それがよかったのか、口に含むと淡雪のようにふんわりとした歯ごたえが返ってきた。熱を通すことで味が活性を持ったようだ。淡泊なのがかむほどにムツ本来の味が出てきた。レモンを数滴垂らして昆布塩にちょんとつけただけの食べ方が絶妙に合った。ふわりとした歯ごたえに続いて淡泊ながらもしっかりとした魚の味がわかる唐揚げだ。

七輪で焼く干物
<干物>
おいしいはずという確信はあった。しかし今回は天気が悪く、冷蔵庫の中で乾燥させたことでちょっぴり不安はあった。それが一切れ口に含んだら感激に変わった。魚の味が淡泊なので、昆布塩の効果が高まったようだ。期待通り味にふくらみがでた。干物は七輪で焼いた。炭は和歌山から取り寄せた備長炭。干物をおいしく食べるには炭で焼くに限る。魚からぼたぼたと落ちる脂が煙になって魚をいぶすのので、ちょうど薫製のような効果で香ばしさが増す。この魚、干物にすごくあう。ただし自ら釣って作るしか入手法はなさそうだ。
<味噌漬け>
淡泊な魚なので西京みそに漬けたかったが、あいにく近所には売っていなかった。仕方ないので白みそを使うことにした。みりんと酒で伸ばしたみそをタッパーに敷き、キッチンペーパーを乗せた上に切り身を並べる。またキッチンペーパーをかぶせてその上からみそをかぶせる。そして冷蔵庫で3日間眠らせた。これも干物と同じように七輪で焼く。味噌漬けは焦げやすいので、網を使わず金串にさして焼く。遠火の強火でじっくり焼いた。ムツは白身の魚なので味噌漬けとの相性はばっちり。みそが身を絞めてくれるので、味が濃厚になる。それにみその香りがマッチして香りと味の調和がすばらしい。
どの料理もそれぞれムツの繊細な味を引き出してくれたと思う。むしろおいしい魚にはあまり手をかけない方が素材そのものの味が楽しめていいのだろう。おいしい魚を釣ったら魚を生かす料理で食べる、そこで釣りが完結するのかもしれない。